事務長の仕事は、理事長や院長の考え方や事務長の能力によって、大幅に異なります。
単なる御用聞きで、経営者の雑務をこなすだけの簡単な仕事を求められる方もいます。
当然、そのような事務長は、他の人材で代わりがきくので、年収ははっきり言って安いです。
事務長の仕事は、採用活動の一環で、学校や行政や紹介業者に働きかけたり。
就職フェアに参加して、広く人材を募ったり、求人に対する応募者の面接、人事を考えたり。
退職勧告や解雇の通知等、人事部長の仕事や病院の診療報酬や請求業務の管理監督。
病院事務長の仕事は多岐にわたる
人材育成や病院内の伝達文章の作成、制度の構築等の総務的な業務。
県庁や市町村等の役所との折衝や提出書類の作成、給与や経理業務の管理監督。
病院の建物や設備の修繕や管理、人材育成のための研修の企画、防火訓練等の実施。
近隣住民や自治会長や水利組合長や土地改良区等地元有力者との友好な人間関係作り。
選挙対策による、国会議員や県議会議員や市議会議員との有効な関係作り。
患者や業者や地元住民や従業員のトラブルや苦情処理等事務長の仕事は多岐に渡ります。
本当に何でも屋と言っても過言ではない仕事です。
私の知っている病院の事務長は最近では、優秀な部下が育ってきたので、雑務的な案件を依頼されることはあまりないようです。
事務長に昇格した当初は、だれの管轄か分からない業務で面倒くさかったり、難しそうだったり、大きな問題に発展しそうな案件は、ほぼ全て、その事務長の業務としてやらされていました。
事務長の仕事は病院によって異なる
こういうハードな案件から、逃げずに解決できる力がないと、事務長として、優秀な実績は残せないかもしれません。
その他の事務長の仕事や業務としては、経営者の右腕としての補佐やサポート業務。
利益の改善を提案 して実行したり、実際に病院の経営を任されている凄腕の事務長(事務長から昇格して、理事等の立場で、こういう 業務をやっている方もいます。)もいます。
これはある病院でのエピソードですが見学に来た4 0歳代前半の事務長は、理事で理事長の代わりに挨拶をしていました。
話をして、理事長が全面的に経営を任せているのがよく分かったようです。
実際に病院経営をしている事務長が、世の中にはいるという事がよくわかります。
話をすると物腰柔らかく、丁寧で話やすい方で魅力あふれる方だったようです。
医療事務の知識はなくても大丈夫
事務長の仕事で医療事務の仕事が出来ないとお断りされるのではないか!!!
と心配になる方が多いのではないでしょうか?
正直な話、出来なくても全然大丈夫です。
当然、医療事務の知識があれば、それに越したことはないのですが、無いならないで、全然問題ありません。
この様な事を開き直っていっている、病院事務長歴10年以上の人も全く医療事務の知識がありません。
よって、医療事務の仕事でトラブルやミスが発生しても、その事務長が対応する事はありません。
(なぜかと言うと、分からないから出来ないからです。
少々恥ずかしい話ではありますが。 )
医療事務あがりの病院事務次長が全て対応してくれます。
病院の規模が小さければ、人材に余裕がないので、そんな優雅なことを言ってられませんが、規模の大きい病院では、良く聞く話です。
医療事務の仕事をしていない人が、医療事務の仕事を実際にしている人より詳しいわけがありません。
よって、当たり前といえば当たり前です。
私が知っている事務長を証券会社を退職して、病院に入社しました。
そして、総務の仕事を5年して、事務長に昇格したので、医療事務の仕事を分かれと言う方がおかしな話です。
はじめから開き直っていたわけではない
ただ、知り合いの事務長が今の病院に入社してから、ずーっとこのように開き直っていたのかというと、全くそうではありまえん。
事務長に昇格して2~3年は、医療事務が全く分からないなんて失格だと、ものすごく劣等感を感じていました。
ではなぜ、医療事務なんて出来なくても問題ないと開き直れたのか?
事務長の一番大切な仕事は、部下が気持ちよく働ける環境を作る事だと考えているからです。
もっと具体的に説明すると、部下が起こしたトラブルで、部下の手に負えない状態である時。
上司である事務長が、それは部下の仕事だから自分で解決するようにと逃げてしまった場合。
考えてください。
部下の仕事がどうなるかを。
ストップして、大きなストレスを抱えて解決できなければ、泥沼にはまってしまいますよね。
病院事務長が部下に荷が重いことを気が付いて、部下を助けるために、速やかに行動し、解決する事が出来たらどうなるか。
部下はその後の仕事を気持ちよくスムーズに出来ます。
部下の手に余る仕事をそんなことぐらい出来ないのか。
と厳しく注意してしまうと、部下は上司である事務長に分からない事を聞けなくなります。
そして、どんどん仕事が滞り、新たな問題を引き起こします。
部下が気持ちよく働ける環境を作る
逆に上司である事務長が、仕事が滞っていそうな部下に対して、何か問題ないとか、分からないことがあったら聞いてと、相談しやすい雰囲気を作れる場合。
分からないことでも、どんどん上司である事務長に相談して来るので、仕事の幅が広がります。
病院事務長が一番しなければならない仕事は、部下が気持ちよく働ける環境を作る事です。
その仕事が出来ているのであれば、医療事務の仕事なんてできなくても全く問題ないと思います。
(出来るのに越したことはありませんが。
先日も、厚生支局の適時調査で、病院側の出席者のトップで対応したのですが、指導員の質問に対して、分からないことも多く、事務次長や課長に助けてもらう場面が多かったようです。
冷や汗をかきながらの対応だったようで、自分で理解しておいた方が、こういう場面では困らずに済みます。 )
医療事務の仕事は医療事務が出来る人の中で、一番優秀な人に役職を付けて任せればいいのです。
次に事務長の転職や就職事情について紹介します。
病院や介護施設の事務長に転職する方法はいろいろあります。
病院の経営者等が、取引する銀行証券会社等に頼んだり、担当者を気に入って、引き抜いたりするパターンです。
私の知り合いの場合は、証券会社を退職して、自宅で国家資格を目指して勉強していた時に、証券会社の先輩から病院の院長が入社して欲しいと言っている。
と言われて、事務長ではなく事務長候補として、一般社員の下積みから入社しました。
それ以外にも、銀行から出向でとか。
銀行を退職してとか。
引き抜きとか。
すでに、退職していた方が、いきなり病院に事務長として入社したというケースも多いです。
数字に強くお金や金融に詳しい。
そして、固い信用力が高いイメージのある銀行員や証券会社経験者を事務長にしたい。
という経営者が多いから、このようなパターンで、転職するケースが多いのだと思います。
別のある事務長の場合は、地方銀行で1年間融資を、3年間渉外という営業の仕事をしました。
はっきり言って、病院の仕事より、何倍もハードな仕事をこなしてきたので、病院に入社して、事務職員を見渡したら、その人以外に事務長になれそうな人はいなかったようです。
なので、銀行員を事務長に迎えたいという経営者の気持ちはよくわかります。
その地方銀行から、私が知る限りでも、私を含めて、3名が事務長として、転職しています。
一人は、その病院の親せきで頼まれて銀行を退職したそうです。
もう一人は、銀行で部長をしていたところ、理事長から気に入られて、まず、出向という 形を取って、その後、病院に完全に転籍したようです。
年収は1800万円だったそうです。
転職や就職は銀行員や証券会社やエージェント利用者が多い
次に転職エージェントを利用して、事務長に転職するケースも多いです。
これは意外な話かもしれませんが、病院や介護施設で、新卒で入社した生え抜きの事務職が、事務長に昇格するケースが少ないです。
それは、事務長が退職する時期になると、外部から採用するケースが多いからです。
経営者も事務長を任せられる人材とのコネクションがありません。
なので、事務長を採用する為に必要な能力や資格や経験を持った人材を、転職エージェントに依頼して探してもらう事が多くなります。
有名なのが、m3.com CAREERになります。
これは、北海道のある病院の事務長の話ですが、40歳代まである会社の工場長の仕事をしていて、東京に転勤になる事がきっかけで退職しました。
その後、転職エージェントに登録して、まず初めに、診療所の事務長でいろいろな雑務をこなしました。
その後、ステップアップの機会をうかがい、2度の退職からの転職で500床以上の大病院の事務長になった方もいます。
その方は、診療所の院長から、あなたはこんなところで仕事をする人ではない。
もっと規模の大きいところを目指しなさいと言われたそうです。
非常に度量や器の大きい院長です
その診療所の院長は、非常に度量や器の大きい方だったと思います。
中国地方のある病院の事務長は、新卒で病院に入社して、10年間医療事務の仕事をして退職。
その後、転職エージェントを利用して、31歳で病院事務長として入社。
40歳代前半の現在は、昇進昇格して、理事として経営全般に携わっていると言っていました。
非常にしっかりしている方でした。
その他、事務長は、病院のお金や重要な情報を知りうる立場になるので、身内を事務長として、採用するケースも多いです。
理事長や院長の妻であったり、娘や息子等の子供であったり。
いとこや叔父や叔母や甥や姪であったり。
少しでも、血のつながりの濃い人材を事務長として、採用するケース も多いです。
親族や友達というパターンも多い
ある病院事務長も経営者の義理の弟で、元々、中小機械メーカーでやとわれ役員をしていた方でした。
お母さんが理事長で、その娘が事務長。
銀行員の親戚を口説いて、事務長に迎えている病院もあります。
理事長や院長の友達を事務長として、採用するケースもあります。
これは、沖縄県の病院の理事長や院長や事務長から聞いた話です。
事務本部長も事務長も看護部長も、全て理事長院長の同級生という事でした。
事務本部長は、石油販売の会社で、事務長は建材の営業をしていたようです。
そして、友達だった理事長兼院長からそろそろうちの病院で働いてくれないか!!!
と口説かれたそうです。
それぞれ、事務本部長と事務長として、転職したそうです。
ものすごく仲良しこよしの病院です。
中途採用の事務職員で昇進昇格することも
その他には、中途採用の事務職員で病院に入社して、事務長に昇格するケースも多いです。
私の知り合いもこのケースに当てはまりますが、20歳代後半で入社した時に周りを見渡すと、正直な話、簡単に事務長になれるなと思ったようです。
そして、その4年半後に、係長や課長を経て、事務長に昇格しましたので、その病院の経営者も同じ判断だったのだろうと思いました。
自分の能力や力に自信がある方は、別に、事務長職での転職にこだわらなくても、入社して、自分の力で事務長職を掴みとる事が出来ると思います。
私がお会いする方の中には、父親が事務長で、その息子が外資系の保険会社を退職して、就職活動していたのを、病院の経理担当者で入社させて、その父親の次の次の事務長に昇格させたケースもあります。
世襲制のような形で、全く病院の親族と関係ない事務長が、その職業を引き継ぐ事があるんだ!!!
とその話を聞いた時は驚きました。
その他、市役所の部長の定年退職を期に病院の事務長に迎えた!!!
というケースもあります。
事務長が市役所等の役所と強いコネクションがあるとスムーズに行くことがありますので、OBを採用するメリットはあります。
そして、少ないケースでありますが、薬剤師や精神保健福祉士等のコメディカルスタッフの中で、優秀な人材を事務長に抜擢したケース。
新卒の事務職員が事務長に昇進昇格したケースがあります。
事務長の就職転職事情は様々です。